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「奈良大和路のみほとけ~令和古寺巡礼展」国宝「聖観音菩薩像」お出まし~薬師寺東院堂からMIHO MUSEUMへ

TNCプロジェクトが企画した「奈良大和路のみほとけ~令和古寺巡礼展」は山口会場(6月9日終了)の次にMIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市信楽町)で開催されています(7月6日~9月1日)。MIHO MUSEUM会場には、超有名な仏様、薬師寺東院堂のご本尊「国宝:聖観音菩薩像」が展示されています。「よくまあ、出ましたね!」とか「あの聖観音さんが出るんですか!」と、奈良のお寺様や展覧会業界内から、この仏様がお出ましになることに驚きの声をいただきます。

展覧会の趣旨に大いに共鳴された薬師寺様の方から、お出ましのお話をいただきました。お寺様からは2会場のご出陳の申し出もいただいたのですが、文化財保護ということから国宝は年に何日間の出陳というルールが文化庁によって決められていてMIHO会場だけになった次第です。
100年前に一世を風靡した「古寺巡礼」の著者、和辻哲郎は、この観音様を「恐らく世界に比類のない偉大な観音が立っている」と書き、続いて「美しい荘厳な顔である。力強い雄大な肢体である。仏教美術の偉大性がここにあらわにされている。」〜云々とべた褒めです。「ファッショナブルな像」だと形容したのは作家の五木寛之さん。多くの文化人たちがこのお像の魅力を伝えています。1400年も前の奈良白鳳時代の端麗で貴公子然としたお姿が今に伝わる喜びがあります。普段はお厨子(仏像などを安置する箱のような仏具で正面に両開きの扉がある)の中に立ってらっしゃるので、見ることのできない後ろ姿も本展では拝むことができます。

展覧会裏話を少し

身の丈は約190センチ、重さは1トンもあるというこの仏様をお厨子の中から運び出し、移動させるという作業は大変なものでした。2日がかりでした。このお像を何度も運んだというプロフェッショナルのリーダーのもと10数名のスタッフで行いました。初日はお厨子の天井を外し、光背を取り、お像を守るための梱包で一日がかり。翌日は重機を使ってお堂から運び出し、専用の箱に入れるまで半日。無事に美術品専用車へ納めることができました。こうした文化財の取り扱いの技は継承させていかなければと思いながら作業を注視していました。江戸時代にも出開帳ということで奈良の仏様たちがお江戸まで運ばれた記録があります。日本通運など輸送会社や重機もない時代に、重たい仏様たちが箱根の峠を超えていった様は想像するに驚きとともにその熱意や知恵に敬意を表します。

お身代わり

仏様がお出ましになり、御不在となってしまう時は複製(レプリカ)のお像を設置することにして、せっかくお参りになった方をがっかりさせないようにします。いつの頃からか、誰が言い始めたのか不明ですが、複製のお像を「お身代わり像」と言います。今回も樹脂でできたお身代わりの「聖観音様」をお厨子の中へ設置しました。このお像が災難にあった時に「身代わり」になってくれる仏様だと勘違いされるご参拝の方もいらっしゃるとか。それはそれで良い話かと思います。

MIIHO MUSEUMへ~一日で奈良大和路の古寺巡礼ができる

MIIHO MUSEUMは信楽焼で有名な滋賀県甲賀市信楽町の山中にあります。山の緑に囲まれた凄く大きな美術館です。その大きさとデザイン性に度肝を抜かれます。美術館の設計はルーブル美術館のガラスのピラミッドの設計者I.M.ペイ氏です。「美術を通して、世の中を美しく、平和に、楽しいものにしようと」いうコンセプトで茶道具、神道・仏教美術、書画、陶磁器、漆工など多彩な日本美術から古代オリエントまでのコレクションは約3,000件です。

レセプション棟で、まず受付をして電気自動車に乗って桜並木を通り、トンネルを抜け美術館棟へ到着。このアプローチもワクワク感を演出してくれます。

展覧会開催中は大津市のJR石山駅からバスが出ています。バスに揺られ山を上がっていきます。およそ50分で到着。一度は訪れたい日本の美術館のひとつです。桜の時期は特に至福の場所となり国内外から多くの人が訪れます。

そんなMIHO MUSEUMでの本展で「一日で奈良大和路の古寺巡礼」を楽しめます。

筆者:のぎめてんもく

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