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「棟方志功展」~半年でできあがった展覧会

今回は、私の経験上、最短の時間で出来上がった展覧会の話をしましょう。

今年~令和7年の4月25日から5月18日まで鶴岡アートフォーラム(山形県鶴岡市)で「没後50年記念棟方志功展」が開催されました。本展をプロデュ―スしました。昨年10月に鶴岡アートフォーラムとメールのやりとりから始まって、その半年後に実施された展覧会でした。

これまでの経験では通常、展覧会は3年前くらいに発想され準備を進めていきます。海外展になるともっと前から企画を進めることもあります。それがナント!半年で出来上がったのです。

ただ全く白紙の段階から始まったわけではありませんでした。「棟方志功」は、海外でも多くの賞を受賞した日本美術史上に輝く世界的な巨匠です。生存中には、その独特の制作風景は映像でよく知られ、また棟方夫妻をテーマにしたドラマも何度かテレビ放映されました。古くは渥美清、片岡鶴太郎そして劇団ひとりが棟方に扮したのです。

そんな棟方志功の展覧会を企画してみようと思ったきっかけは、仕事仲間との会食での会話でした。かつて彼女の祖父が棟方と交流があったという話。棟方からの手紙や作品が祖父のもとにあったという話です。その時は「へ~」で終わっていました。

そうした仕事仲間との話も忘れていた頃、旧知の美術館学芸員A氏が青森県立美術館を辞めて福岡の美術館に戻ってきたという知らせが届きました。昨年の4月です。久しぶりの再会でした。青森県立美術館といえば「奈良美智」「シャガール」そして「棟方志功」のコレクションで知られた美術館です。

仕事仲間との会話を思い出し、棟方の作品を直に観たくて「棟方志功展」の企画ができないものかと彼に相談しました。我ながら、なんと短絡的!と言われかねませんが・・・ノリのいい(というと失礼かもしれませんが)彼の返事は「やりましょう!」でした。しかし、準備もあるので2~3年後ということでした。

2~3年後の開催のつもりで、昨年の初夏くらいから、企画はゆっくりとスタートしたのです。

ところが昨年の10月、半年後(つまり今年の4~5月)に開く予定の展覧会が決まらないから何か提案して欲しいというご相談メールが会社に届いたのです。お会いしたこともない鶴岡の美術館の方からのメールでした。メールのキャッチボールが続きます。今風のやりとりですね。私の頭の中に「棟方志功展」が浮かびA氏に相談しました。何事にも前向きなA氏。時間はないけど、やってみよう!ということでコーディネートしてくれることになりました。鶴岡も「棟方志功」を受け入れてくれました。

A氏はご自分の海外での企画展を抱えながらも進めててくれ、古巣の青森県立美術館や棟方志功記念館との交渉が始まりました。開催まで4か月と迫っていました。青森県立美術館や棟方志功記念館の皆さんも献身的に展覧会制作を進めてくださいました。

その間、マネジメントをやる私たちは輸送のコト、作品に付保する保険のコト、会場となる美術館の展示プランや印刷物のサポートなどに取り組みました。実に短時間で集中的に多くの関係者の力が結集し、無事に名品揃いの立派な「棟方志功展」が出来上がったのでした。

展覧会発想のきっかけ、企画に賛同していただける方とのご縁、関係者それぞれのネットワークやノウハウ。すべてが上手く繋がった結果でした。ただただ感謝です。私は棟方芸術に直に触れることができたことや、棟方の故郷、青森とのご縁ができたことにも感謝です。

もともとあの時には、2~3年後に開催予定だった「棟方志功展」。実は今、2027年に開催するために、またA氏や青森の方たちと動いているのです。もし、このブログを読まれた美術館の方で開催に興味がある!となった場合、メールでお問い合わせいただければ嬉しいです。今風のお誘いです。

そういえば、妻チヤの目線から棟方志功を描いた原田マハさんの感涙のアート小説~ベストセラーになった「板上に咲く」をまだ読んでいませんでした。

4月中旬 鶴岡の桜は満開 近くの金峯山にはまだ雪が残っていました。

筆者:のぎめてんもく

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