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「おいでよ!絵本ミュージアム」企画のお話し

前回からの「奈良へのいざない」を続けていこうと思ったのですが、今年でファイナルとなった「絵本ミュージアム(8月27日終了)」企画を振り返ってみます。

西日本新聞創刊130周年に当たる2007年に第1回は始まりました。企画の段階では1回限りのつもりだったのですが、予想を超える来場者(4万人超)があり、高評価をいただき、続けていくことに。17年間、17回続くとは・・すっかり福岡の親子の夏の風物詩でした。この企画の成り立ち、裏話をしましょう。

絵本ではなく「子供たちの職業体験イベント」の企画がきっかけ

実はもともとは、絵本ではなく「子供たちの職業体験イベント」の企画がきっかけでした。2006年東京でキッザニア(子供の仕事体験)がオープン。調べているとドイツで「ミニ・ミュンヘン」と言って夏休みの3週間、子供だけが運営する「小さな都市=ミニ・ミュンヘン」という企画がありました。この仮設都市で、子供たちは仕事をし、街を運営していくというものです。日本でも「ミニさくら(佐倉市)」が始まっていました。

さて、どこに相談するか?九州大学では学部横断の「子供プロジェクト」が立ち上がっていました。担当の目黒実特任教授とコンタクト。同時に以前一緒に仕事をした「NPO子ども文化コミュニティ」の高宮由美子代表にも相談。でも子供たちの職業体験イベントの企画はなかなか前に進みませんでした。そんな中、目黒先生が「旅する絵本カーニバル」をプロデュースされていることを知りました。同大が所蔵する1000冊を超える絵本を九州各地へキャラバンしていました。

「絵本」がキーワードに

「絵本」だ!職業体験の方は置いておき、「絵本」がキーワードに。福岡市美術館の当時の学芸課長だった尾崎直人さんと話していると「美術館という絵のある空間に親子が座布団やクッションを持ってきて寝そべったりして絵本を楽しむというのはいいよね」と・・・「美術館で絵本の企画」「親子の新しい美術館の楽しみ方」「美術館を遊園地化する」~頭の中にいろんなキーワードが浮かびました。そして目黒先生、高宮さんに「絵本」企画で相談を開始。福岡県内の美術館にも相談を開始。昔、母親に読み聞かせしてもらった絵本の中の風景や人や動物がオブジェとして飛び出してくるような展示空間づくり。九州大学がやっている「旅する絵本カーニバル」のように美術館にたくさんの絵本を置いて、そんな空間で絵本を読んでもらう!企画の骨子が固まりました。目黒先生、高宮さんとともに企画の中身を詰めていきました。

積極的に反応してくれたのが福岡アジア美術館

そうした中、県内美術館で積極的に反応してくれたのが福岡アジア美術館(以下アジ美)の学芸員、ラワンチャイクン寿子さんでした。彼女は子育ての真っ最中でしたから、この企画の趣旨に即、賛同。2007年はアジ美だけではなく、県内のほぼ全ての美術館(九州国立博物館もです)と今はなき商業ビル「イムズ」も、夏休みに何らかの「絵本企画」をやることがトントン拍子に決まりました(2007年6月から9月、福岡の街を絵本で彩るイベント「絵本カーニバル IN FUKUOKA 2007」福岡県内で計12館が同時期に「絵本」をテーマに展示やイベントを展開しました。)これは目黒先生の魅力がそうさせたと思っています。足元は赤いソックス、かっこいいおやじ髭の目黒先生は、私に言わせると「ちょい悪オヤジ風」で、美術館の女性学芸員には大うけでした。もちろん「九大子供プロジェクト」担当特任教授としての目黒先生の魅力あってのお話ですが。

4万人を超える来場者

私たちはアジ美をメインに県内各美術館と連動しました。アジ美では、半分は絵本から飛び出したような空間づくり、半分は「福音館書店」企画を買いました。「ぐりとぐら」のたまごの体感コーナーなどです。因みに第2回は「ゲゲゲの鬼太郎」第3回は「ムーミン」・・会場の半分は企画を買い、半分はオリジナルな企画で。4回以降は基本オリジナル企画でした。もちろん、会場には1000冊近い絵本が置いてあり、暑い夏のひと時を涼しい美術館で家族や友達と絵本を楽しんでもらえたのです。「子ども文化コミュニティ」の皆さんが会期中、盛りだくさんサブイベントをしかけてくれました。4万人を超える来場者。アジ美も驚きました。来場者の半分は子供たち。将来のお客さんです(17年前に連れられて来られた子供はもしかしたら、親になってその子供と来てくれているかもしれませんね)。来年もやろう!となったのでした。

企画趣旨が企業理念と一致

さて、ここまで成り立ちを綴ってきましたが、忘れてならないのがスポンサーです。企画の概要が固まり始めたころにNTT西日本九州支社へ持ち込みました。なぜなら当時、同社の副支社長が大学の同級生だったからです。もちろん企画の趣旨に賛同してもらえるだろうと思ってのことです。同社は電気通信サービスの提供が主たる業務なので、人と人、人と社会をつなぐ「コミュニケーション」の促進が企業ミッション。絵本を媒介に親子、友達などで様々なコミュニケーションが促進されるという企画趣旨が企業理念と一致したからでもあります。資金面のサポート以外にもデジタル技術の提供により関連イベントや東京の文化施設やこども病院などと会場をつないで一緒にワークショップを実施するなど、スポンサーという立場に留まらず共同企画者として取り組んでいただけたのです。17年間サポートいただきました。そして長く続いた立役者は第1回からプロデューサーとして尽力いただいた高宮さんでした。「親から子へ、子から孫へと読み継がれ、世代を超えて感動を共有できるもの。それが絵本が持つ魅力のひとつです。絵本ミュージアムはその魅力をたくさんの人たちと共有できる場所だったからこそ、ここまで続けてくることが出来ました」高宮さんはこう話します。

私は途中から放送局に異動になり、傍観者となりましたが、放送局のアナウンサーによる絵本読み聞かせなどを実施することができました。振り返ると企画というのは、多くの人とのご縁を繋げることによって成り立つのだと、思い至るのです。

NPO法人 子ども文化コミュニティのHP

企画ギャラリー|おいでよ!絵本ミュージアム2009 https://kodomo-abc.org/ehonmuseum2009/kikaku-g.html

筆者:のぎめてんもく

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