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メイキング・オブ・『わたしたちのルノワール』

これまでは、すでに終了した展覧会のことを綴ってきましたが、今回は現在進行形でつくっている展覧会『わたしたちのルノワール』について書いてみることにします。

 展覧会企画のきっかけには、作家の生誕や没後何年の節目、美術館からの働きかけなどがあります。そしてもちろん、自分がやりたいと思うテーマで企画を実現させていくことも大きな醍醐味の一つです。昨年の『令和古寺巡礼展』は、私がいつか仏教仏像関係の展覧会をやりたいと思い続けて実現したのですが、もうひとつ心に秘めていたのが「ルノワール」でした。印象派の画家で日本人が大好きな画家です。私も大好きで、フランスやイギリスそしてスイスの美術館まで有名なルノワール作品をお目当てに出かけるほどでした。
 なぜ、ルノワールが好きか? 豊かな生い立ちではなかった彼が、「幸福の画家」と言われるほどに家族や友人に恵まれ人生を長く穏やかに生き、それが作品にも表れて、観る者に幸福感を与えてくれるからでしょうか。生き生きとした絵の中の人物たちを観ると単純に「いいなあ」と思えるからでしょうか。

実は九州では1987年に福岡市美術館で開催された『ルノワール展』以来やってないんです。私は2016年に九州国立博物館で開催する段取りで進めていたのですが、いろいろな要因で頓挫してしまいました。以来、私のどこかに「ルノワール」がずっと潜んでいました。

思い続ければ、チャンスがやってくるのですね。3年前、2023年の秋も深まったころから、熊本県立美術館の皆さんとやがて来る開館50周年企画のことを相談していました。同館とは以前から何度かご一緒した仲です。年が明けて2024年のはじめに開館記念展として「ルノワール展」はどうだろう?と提案があったのです。同館所蔵のルノワールは以前から素敵な絵だと思っていました。即、乗った!です。

 幸福の画家ルノワール。再び、日本人が何故ルノワールを好きなのか?喫茶店の名前にもなり(「喫茶ルノアール」ですが)、テレビコマーシャル(リョーユーパン)や、企業のカレンダーにも作品がよく使われてきました。日本には相当数のルノワール作品があるようです。日本とルノワールの関係、日本人とルノワールの関係。美術史的に言うと「日本の西洋絵画受容史におけるルノワール」。そんな切り口から『わたしたちのルノワール』という名の展覧会です。

【写真提供:Vivien Wang氏】

 日本人がルノワールと接したのは、彼が晩年の頃です。その頃、彼はパリとともに気候のいい南フランスにも居を構えていました。私は以前、別の展覧会の企画で南フランスに出張した際、たまたま時間ができたので通訳の方の運転で晩年のルノワールの住まいを訪ねたことがあります。カーニュという地にあるかつての彼の住まいは美術館になっていました。庭ではちょうど、オリーブの収穫をしていたのを今でも鮮明に覚えています。そんな経験もあって、今回の話が持ち上がった際、勝手ながら私とルノワールの縁を感じたのです。2024年、『わたしたちのルノワール展』の企画がスタートしました。(つづく)

《藝術新潮12月号 2026年「これだけは見ておきたい美術展」で紹介されました》

筆者:のぎめてんもく

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