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「展覧会 ウラ話し・オモテ話し」第1回 美術展はこうしてできあがる④

「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」
(2019~21年東京、宇都宮、大分、仙台、広島、大阪に巡回)

学生時代、美術展といえばデートの場としか考えていなかったが、新聞社や放送局の事業部門(イベント担当セクション)で働き、展覧会を40本近く企画した経験から、展覧会のウラとオモテのお話を綴っています。(①はこちら)(②はこちら)(③はこちら

作品到着

作品を載せたウィーン発のANA機が羽田空港に無事到着しました。海外から到着した美術品は一旦、特別に保税施設(写真)に移されます。基本的には税関のチェックを受けます。日本に入ってきた時と出て行く時に税関のチェック確認を受けないといけません。展覧会のための美術品を日本国内で販売することはないのですが、展覧会が終了し作品が日本から出ていく時に、もし無くなっていると(ほぼ考えられないのですが)、販売したとみなされ消費税の支払義務が生じます。評価額が1億円の作品だとすると1千万円の支払いです。チェックが終わると保税施設から美術作品が入れられているクレート(箱)は美術品専用車(通称:美専車)に積み込まれ、展覧会会場に運ばれます。

展示作業の前にもやることはいっぱい!

展示される作品が会場に到着する前には、やっておかなければならないことがたくさんあります。会場設営関係としては、作品を紹介するキャプション(作品のそばに付けられている名札のようなモノ)や各種のパネルを事前に作っておきます。本展の場合、磁器作品がありますから展示ケースも特別に作っておきます。また今回は絵画作品を掛ける壁の色に関してもリヒテンシュタイン側の指定があり、事前に壁を特別に作ります。展覧会を紹介する会場映像も必要です。東京展の主催者であるテレビ局が特別に番組を制作しましたから、その映像を購入し、10分程度に編集して会場で流す準備もします。展覧会グッズの制作という仕事もあります。専門業者がリヒテンシュタイン側の許可を取りながら半年位前から来場者に喜ばれそうないろいろなモノを作ります。グッズの売上というのも近年、バカにならない展覧会の収入源の一つです。音声ガイドの制作という仕事もあります。本展では先のテレビ局の紹介で俳優の小泉孝太郎さんにナビゲーターをお願いしました。こうして多くの皆さんの協力により展覧会は成り立っているのです。

展示作業

作品が会場に運ばれてきました。クレートを開けていきます。「開梱(かいこん)」と私たちは言いますが・・リヒテンシュタイン側と日本側で一緒に1点1点、入念にチェックします。作品自体はもちろん、額にも傷がないか、虫食いなどがないか。展示作品、一点一点の状態を調書にチェックしていきます。

チェックが終った作品は学芸員の指揮のもと美術品輸送の専門業者(今回は日本通運の美術専門担当者)により展示されていきます。東京では予定通り3日間かかりました。作品の展示とともにキャプションやパネルを取り付けていきます。最後に照明作業です。1点1点、決められた照度を測りながら効果的に光を当てていきます。照明作業が終わると展覧会の出来上がりです。

多くの関係者の努力が結集した展覧会が出来上がりました。さあ!あとはお客様の来場を待つばかりです。まずは開会式・内覧会そのあとのオープニングパーティです。残念だったのはリヒテンシュタイン侯国の元首であるハンス・アダムス2世の来日が関東に接近してきた台風の影響で中止になったことでした。しかし、会期中にアロイス皇太子殿下の来場が叶いました。(つづく

写真提供:東急文化村、後藤暢子
筆者:のぎめてんもく

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