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「軽井沢に藤田嗣治だけの美術館がオープン」

日本の避暑地の代名詞にもなっている軽井沢(長野県)に行ってきました。仕事仲間の展覧会企画会社キュレイターズの水野社長から自分が館長に就任したのでと、案内があった「軽井沢安東美術館」を訪ねるためです。20世紀初頭、エコール・ド・パリと称されパリで制作活動をした世界中から集まったアーティストたちの代表格である藤田嗣治(レオナール・フジタ)。その藤田だけの美術館。それが何故、安東美術館?

安東泰志さん、恵さん夫妻の個人コレクションを公開した美術館が昨年(2022年)10月に開館した「軽井沢安東美術館」です。安東さんは1981年、三菱銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行、その後、投資会社を経営。順調だった事業が人に裏切られうまくいかなくなり体調を崩し、軽井沢の別荘で静養していた時に軽井沢のギャラリーで巡り合ったのが藤田のパリを描いた作品だったとのこと。その作品を購入し、以降、藤田の描く猫や少女の姿に魅せられコレクションが始まったのです。蒐集した約180点の作品は、これまで東京の自邸に飾っていたそうですが「より多くの人に見てもらいたい」という思いから2018年に美術館建設を思い立ったとのこと。

「この美術館は皆さまを私たち夫婦の家にお招きするという気持ちで、愛する軽井沢の地に用意した空間です。人間には、自分の力ではどうにもならないような運命、あるいは、人間の性である人間同士の嫉妬や欲望に翻弄されて道に迷うことがあります。私たち夫婦は、そんな悩みや苦しみを、自宅でフジタの猫や少女たちと語らいながら乗り越えてきました。(同館ホームページより)」ご夫妻の美術館開館にあたっての思いです。何度か「藤田嗣治展」を企画した水野さんは、4年前に安東さんからアドバイザーになって欲しいと依頼があり、ついには館長に就任したのです。安東さんの思いと水野さんの美術館や展覧会における見識とが結実した素晴らしいご縁の賜物です。

こじんまりした藤田の美術館を想像していたのですが、3階建てのゆったりとしたスペースの個人美術館です。展示作品のクオリティも高く、これだけ揃っているというのは驚きでもありました。かつて福岡市美術館で水野さんの企画レオナール・フジタ展を開催し、その作品や波乱万丈の生涯に魅了された筆者は藤田終焉の地であるフランスのランスを訪ね、藤田に想いを馳せたことがあります。今、こうして日本で多くの素敵な藤田の作品を一堂に見ることができる。個人の力で美術館開館にこぎつけ、文化の花を開かせた安東夫妻に敬意を表するばかりです。安東夫妻を力づけた藤田作品は、また多くの人を力づけ、そのために人々は軽井沢へ向かうことでしょう。「アートの力」です。

【軽井沢安東美術館案内】

住所 長野県佐久郡軽井沢町軽井沢東43番地10
北陸新幹線「軽井沢駅」北口から徒歩8分。
電話 0267-42-1230
開館時間 10時から17時まで(入館は閉館の30分前まで)
休館 水曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始、1月中旬、2月下旬
WEBサイト 軽井沢安東美術館 Musée Ando à Karuizawa | (musee-ando.com)
そのほか 軽井沢には「軽井沢ニューアートミュージアム」「軽井沢現代美術館」など多くの美術館があり、アートを楽しめる。
【軽井沢おすすめ美術館10選】自然とともにアートが楽しめる、とっておき美術館 (asoview.com)

筆者:のぎめてんもく

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